2017年2月16日木曜日

インド旅行記⑦


プシュカルの後、どこに行こうかねということになって、私はほんの少しだけも行ったことのないチベットっぽい雰囲気を体感したくて、というか実際のところチベット料理に逃げたくてダラムシャーラーに是非行ってみたかったのですが、奥さんはバラナシに行きたいと言いました。両方行くにはかなり駆け足になるし、私はすでに行ったことあるし、何よりバラナシは旅行者商売が苛烈なところなので疲れそうだし、もう二人とも疲れるのはなるべく避けたいし、で結局バラナシは諦めて、代わりに同じガンジス川も流れているリシケシに数日泊まってその後最後にダラムシャーラーに行ってデリーに戻るようなスケジュールに決めました。

今回の旅行は、瞑想期間とデリー、ジャイプルを除けば、結果的には旅行者に人気があって長期滞在しがちな小ぶりな町のみを訪ねることになりました。私はやっぱり大きな街より小さな町のほうが100倍落ち着きますね。やはり旅行者が長居をしてしまうような場所にはそれなりの理由があります。町全体なんだかのんびり、まったりとした雰囲気がありますし、旅行者相手の商売の方々もそれほどガツガツしないですし、食事するところも多いですし、お土産物屋さんやカフェなどがたくさんあるとぶらぶら歩いて楽しいですし。阿蘇駅周辺もそうなってほしいなーと願っているのですが。


さて、リシケシはヨガが有名なところで、世界中からヨガ修行目的の人達がここに集まり、かなり長く滞在する人も多い町です。ビートルズがかつてここに滞在したのは有名な話ですね。私たちは時間もないのでヨガはパスです。



リシケシでは川辺でガンジス川を眺めていると、今回の旅行の衝撃映像のひとつとして記憶される光景に出会いました。おっさんが川の水で歯を磨いています。特に澄んでいるわけでもない川の水で口をゆすいでペッと吐き出します。自分はまねできるほどワイルドでも丈夫でもありませんが、ここまでは全然いいんです。以前バラナシのガンガーでもよく見た光景です。それからでかいビーカーの様な入れ物に水を汲み、(あぁ、聖なる川の水だから、なんか知らんけど持って帰るんかな)、と見ていると、それを風呂上がりの牛乳のようにぐいっと口に含みました。喉仏が上下に動いています。ん?ナニナニ?の、飲んでんの?ゴクゴクという音が聞こえてきそうなほど喉仏動いてるやん…(唖然)。

イヤイヤイヤイヤ…。いっくらタフなインドの方でも大丈夫なんでしょうか。確かにバラナシのガンガーよりはだいぶましな水ではあるだろうけど、全然澄んではいないですよ。たぶんミジンコやアメーバいっぱい泳いでますよ。『野生動物か!』と思わずツッコミたくなります。インド人ってやっぱりスゲーっす。





衝撃映像で思い出すのが、私の20年近く前の前回のインドで遭遇したこんな光景がよく記憶に残っています。

とあるインドの田舎のほうでおっさんが道のちょっと横でしゃがんでます。そしてそのおっさんと目が合いました。インドの男性は結構しゃがんでおしっこをするのですが、この方はどうやら“大”のほうです。私は(の、野グソしてはるやん…)、と少しの動揺がありました。




…私はおっさんを見ています。のグソしてはる…、と思いながら。




…おっさんは私を見ています。あ、外国人だ、みたいな感じで。




…私はおっさんを見続けます。のグソしてはる…、と思いながら。




…おっさんは私を見続けます。見てんじゃねーよ、と威嚇している目ではなく、何かとても珍しいものでも観察しているかのような、純粋な子供のような好奇心に満ちた瞳で…



………。




……。




…。






…今となっては何秒間くらいの出来事だったのか定かではありませんが、視線はずいぶんと長い間絡み合ったまま動きませんでした。私は思いました。『おっさん違うんだよ。珍しいものを見ているのはおっさんじゃない。俺の方なんだ。分かってくれよ…。』と…。


こんな時はよく、その当時よく聴いた曲、YEN TOWN BANDの“Swallowtail Butterfly~あいのうた~”が歌詞を変えて頭の中をぐるぐる回ったものです。『♪この国の アホのアホさに 心細くなる』そしてなんだかリアルに心細くなったものです(酷い歌詞ですが若気の至りなのでお許しください)。




〈続く〉

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