このお店にメニューはなく、トゥクパ(汁麵)とモモ(餃子)だけのお店です。日本人に特別親近感を持っているのかわかりませんけど、店内には何故か着物の女性の写真が飾ってあり、ご主人は控えめだけど親切でとても感じがいいです。
ここでひとくち目を口にしたときは、思わず「むふっ!」とか何とか呻きました。日本で食べても普通においしいと思いますが、インドで三週間以上経ってから食べるとまず何か呻き声が出ますね。初めて食べるのにホッとする懐かしい味。マサラーに疲弊していた胃にこの上なく優しく染み渡る極上のスープ、麺にコシはないけれどそんなことは些細なことです。この味は日本に帰ってからも懐かしく思い出すだろうなとその時確信しました。モモも大変美味しいです。
この写真はハーフ・ハーフと言ってトゥクパ半分、モモ半分(つまりこの写真の一皿で1人前)で、私たちふたり合わせて、つまりこの上の写真全部でたった150ルピー(300円弱)でした。しかもご主人がチャイも飲みなさいという感じで「チャーイ?」と聞くのでじゃあくださいとチャイも飲みましたがチャイはなんと無料とのこと(チャイは薄いけどタダは他にないと思う)。ここで食べていると地元のチベット人が結構入れ代わり立ち代わりやってきて慣れた様子でハーフのトゥクパをササッと食べて出ていきます。地元民ご用達の食堂という感じでしょうか。
午前中はマクロードガンジのほとんどのレストランがまだ空いていない中、朝早くから開けていて(何時からかは知りませんが、8時半頃には開いてました)私たちは滞在中毎朝ここで食べました。ホントは他にもブログで見て絶対おいしいだろうなという、トゥクパ専門店もあって(ドライトゥクパのあるあのお店です)ぜひ食べ比べしてみたかったのですが、残念ながら滞在中ずっと閉まっていました。でもここだけでもオープンしていてくれてよかったです。場所はメインスクウェアからメインストリートが2本南に伸びていますが、もう一本、目立たないですが車は通れない細ーい道が一番西側に下ってます。そこを右側を気にして降りていけば見つけられるでしょう。メインスクウェアから歩いて1分もしないくらいだと思いますよ。
しかし食べ物の話ばかりでいけませんね。まあ基本私の旅行など所詮花より団子です。それでもダライ・ラマ法王邸宅もあるツクラカンコンプレックスはもちろん行きました。私たちが行ったとき法王は不在でしたので、警備の方も若干リラックスした感じだったのですが、やはり思ったのが(質素だなあ)ということ。もちろん邸宅の中は入ることが出来ませんので分かんないですけど、ハリウッドスターも謁見に訪れると言われる世界のVIPの住まいにしてはとても質素な外観で、もうちょっと豪華でもいいんじゃないかなあ、なんて思ってしまいました。
併設されているチベット博物館も見学しました。自分の無知を晒すようで気が引けますが、ここでかなり驚いたのが、チベットの領土だった地域(今ではもちろん中国の領土とされていますが)のことです。私はてっきり何々県だとかせめて四国とか、その程度の大きさだろうと勝手に想像していたのですが、実際はインドの2/3もの広さのある広大な地域であったということを初めて知りました。
館内では多くの写真が展示されているのですが、由緒あるチベット寺院が次々と破壊され、味も素っ気もない集合住宅が次々と建設されている写真を見るとやりきれない思いがします。現在も続くチベット人の抗議の焼身自殺もこうやってまざまざと見せられると、ハッとさせられるというか、これが現代社会のある地域では現実に、実際に起こっていることなんだということが信じられないような気になります。翻って日本では別種の不安感、閉塞感や息苦しさが社会にうっすらと蔓延しているような気もしなくはないとは言え、平和といえば平和なのでありがたいよなあとささやかな感謝の気持ちも湧いてきます。
さて、そんなこんなでマクロードガンジでの滞在もあっという間にタイムアップです。冬季休業中でクローズしている食堂が多かったのは残念でしたが、この町は大変気に入りました。インドであってインドではない町というか。インドという国に身も心も胃袋もなんだかんだと小突き回されて疲弊してしまった長期の旅行者にはホッとするオアシスのような場所なんじゃないでしょうか。
〈続く〉
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