2012年8月8日水曜日

気まずい。

10数年前のバックパック旅行中の、現在大変シリアスな状況下にあると伝えられている中東シリアでのはなし。

どこの街か忘れましたがダマスカスではなかったどこかの街を歩いていると、ひとりの青年が私の拙すぎる英語より数段上手な日本語で話しかけてきました。
海外において日本語で話しかけてくる人物は怪しい場合も多いのですが、その学生風の青年は純粋に日本語を話したくて声をかけてきた様子でした。

どこから来たのデスカ?何で日本語がそんなにできるの?どのくらい旅行してるんデスカ?シリアは何がおいしいの?等々、はっきり言って何を話したのかはよく覚えてないですが、たぶんそんなような話をしていたんだと思います。すると唐突に彼が言いました(これははっきり覚えてます)。

「ワタシ、ニホンジンがなんでアメリカがキライかシッテマス。」


え?(オレ、アメリカキライなんて一言も言ってないけど…。)」



「ヒロシマ、ナガサキ…。」


人類史上未曽有の核兵器による無差別大虐殺ですので、今でこそシリアの人が知っていることに何の不思議もないと考えられますが、唐突だったこともあり、世間知らずな若造だったこともあり、日本から遠く離れたシリアの人の口から広島、長崎という単語が出たことに少なからず衝撃を受けたのでした。

その彼はアメリカが大キライみたいでした。私も特にアメリカを擁護する理由など何ひとつないどころか、アメリカという国をこき下ろすことに関して実際のところ決してやぶさかでない気持ちもありましたので、だよねー、アメリカってなんかすっごく傲慢だよねー、的なハナシにひとしきり国境を越えた大輪の花が咲いたのでした。




そして話は変わり、彼は私の着ている服がトテモカッコイイとホメだしました。その服は日本で買って確か1万円くらいもした私にしてはかなりの高級品でした。黒いウインドブレーカーのようでいて膝くらいまでの長さがあり、雨が降っても水を通さずレインコート代わりにもなり、軽くて、コンパクトにたためるその服は、その時すでに日本を出てから半年を越えていた長期の旅行中に大変重宝していた自分でも大のお気に入りでした。


彼は、その服はメイドインジャパンでしょう?やっぱりメイドインジャパンはクオリティがチガイマスネー。などとホメ倒してきます。私は日本人として得意げな表情を押し殺し、どこ製だったかなー、やっぱりメイドインジャパンなのかなー、などと呑気にほざきつつ服についているタグをふたりしてさがしました。



 ありました。そしてそこにはこう書いてありました…。







“MADE IN USA”


「あっ。」とか思わず口から漏れてしまったんじゃないかと思います。

ここでまさかのメイドインUSA。

MADE IN UAEでも MADE IN USSRでも何でもいいですが、USAだけは勘弁してほしかった、その時一番あってはならないメイドインです。



気まずい沈黙がしばらく流れ、突如として裏切り者みたくなってしまった私はいたたまれない気持ちのまま、ぎこちなく話題を変えたのでした。








彼は今も元気かなあ…。



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